Interview with Designer Sabine Marcelis

Interview with Designer Sabine Marcelis

2024.4.1

(Collaboration)

  1. 川連漆器という伝統的な日本の工芸とコラボレーションすることにインスパイアされた理由は何でしょうか?そしてこの伝統的な芸術のどのような側面があなた自身のデザイン哲学と共鳴していますか?

私は常にものづくりのプロセスに興味がありました。時代を超えて生き残ってきた伝統的なプロセスはさらに魅力的です。川連漆器の作り方は、単なる製品を作る手段ではなく、地理的や社会的な、地域のありかたそのものを現しています。それは、現代の産業化されたプロセスにおいて完全に失われてしまったものであり、自然とコミュニティとのつながりを含みます。私は、いかなるプロセスや素材を扱う際でも、常に、その素材を独特たらしめる本質の部分を強調し、限界を押し広げることに挑戦します。私はこの未知の世界に飛び込み、どの部分を押し広げたり工夫したりできるかを発見するのが好きなのです。これによって伝統的な技術に新しい視点をもたらすことができます。


  1. このコラボレーションにおいて、あなたの現代的なデザインアプローチを川連漆器の伝統的な技法とどのように統合しましたか?

川連漆器のプロセスは、時間と忍耐と高度な技術を要するものです。漆塗りの仕上がりの面は非常に豊かで光沢があり、濃い色味を持ちます。これは私が最も経験があり慣れているガラスや鋳造樹脂とは非常に異なります。これらの素材は常に透明性があり、面白い光の効果を作り出すために工夫します。透明性はどうにもできないものだと理解したので、利用可能な素材の特性を活かしてどのような照明効果を得ることができるかを分析し始めました。素材の表面から光を反射させることが非常に美しい相互作用を生み出すことがすぐに分かりました。曲線と柔らかい角のある表面は、この効果を補強します。通常、私の樹脂デザインでは、もう少し透明性のある素材を使うので、光が透過するようにするために鋭い角にします。今回は、自然光と統合された光源の両方が表面を反射する際に溶け込むように、丸みを帯びたボリュームのある形状を作りました。

  1. 現代のデザインコンセプトを伝統的な川連漆器の手法と統合する際に遭遇した課題や驚きは何でしたか?

時間が最大の課題だと思います。手軽な実験ができるようなプロセスではありません。より考え抜かれ、計画的な進行が必要です。一つ一つ漆の層は乾燥するのに1週間必要で、各表面は完成するまでに多くの層を必要とします。融通の利くプロセスではないので、最終段階での変更は許されず、初めから自分の決断に確信を持たなければなりません。この経験によって、一度決定したらそれが最後、という教訓を教えられた気がします(そしてこの制約が、実はすごく解放的であることに気がつきました!)。


  1. あなたのデザイン美学と川連漆器の職人技との融合が、将来の現代デザインと伝統的な日本の職人技術にどのように影響を与えると思われますか?

私は驚きをおたえてくれるような、また自分のアプローチに新しい視点を提供してくれるようなプロジェクトに携わるのが好きです。このコラボレーションとその結果はかなり予想外であり、作品を披露するのが待ちきれません。このような新しいつながりを作ることで、私たちの文化はより近づき、日本での他のコラボレーションの道を開くことになるでしょう。私自身もそのような発見を心待ちにしています。日本には他にも素晴らしい工芸品がたくさんあり、他のデザイナーのコラボレーションの成果を見るのがとても楽しみです。このプロジェクトは私の世界を大きく広げてくれました。私は、常に自宅の近くで、自分の工房あるいは故郷の近辺で、ものづくりに携わってきました。このプロジェクトが、残念ながら徐々に失われつつ素晴らしい工芸品に注目を集めるきっかけとなり、このようなプロジェクトに関心を持つ他のデザイナーにも魅力的に映ることを願っています。工芸品は多くの価値があり、決して失くなってはならないのです。


  1. このプロジェクトは、あなたの将来の作品に影響を与えると思いますか?

もちろんです。新しい素材や制作プロセスに関わることは、自分の幅がより広がったことと同然です。今回発表する制作物は、川連漆器を将来的なプロジェクトに盛り込むほんのスタートラインにすぎません。可能性をさらに探求し、佐藤さんとの試行錯誤を積み重ねていくことをとても楽しみにしています。


  1. このコラボレーションに取り組む中で、個人的な成長や製作プロセスそのものという観点で、最も充実感を感じたり、影響を受けた瞬間を教えてください。

インスピレーションを与えてくれる人々と一緒に働くことは、常にコラボレーションの中で最も充実感のある部分です。私は日本語が話せないし、佐藤さんと彼のチームは英語を話しません。確かに言語の壁はありつつも、私が産地を訪問した2日目には、私たちは通訳なしでも意思疎通が可能になり、素晴らしい一日を過ごしました。彼の職人魂と情熱は美しく、刺激的です。私たちは情熱を共有すること通じ合い、言語はほとんど必要ないほどでした。

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