- 伊賀くみひもには、リズミカルで瞑想的とも言える構造があります。そのロジックとご自身の制作との間に、どのような共通点を感じましたか?
私が組紐に触れて最初に惹かれたのは、そのリズムです。私の作品の多くは、律動的な質感や反復する手の動き、そこから立ち上がる「動きの感覚」によって形づくられていますが、伊賀くみひもにも同じ要素を直感的に感じ取りました。
私自身、木を扱うときも草編みなどの手仕事に取り組むときも、繰り返しの所作が瞑想的なリズムを生み、その積み重ねが時間をかけて有機的なフォルムを形にしていきます。
特に草編みは、組紐の「経」と「緯」に通じる構造的な考え方を強く感じさせます。リズムがパターンを生み、パターンの蓄積が形になる——構造の面から見ても、根底にあるのは同じで、規律、反復、そして時間が複雑さを生み出しているのだと思います。

- この工芸は、仏教の儀礼から武士の甲冑、そして昨今ではより現代的な応用に変化してきました。その長い歴史は、今回の取り組みにどのような影響を与えましたか?
世代を超えて受け継がれてきた熟練の工芸に向き合うとき、私がまず大切にしているのは「敬意」という姿勢です。私の文化にも同じ倫理観があり、とりわけ地方では、知識への敬意が金銭的価値以上に重んじられる場面も少なくありません。伝統的な手法や素材に真正面から向き合うことで、作品にはそこから発展していくための確かな土台が生まれます。
私にとって革新は、伝統を断ち切ることではなく、その延長線上で更新していくことです。起源をきちんと踏まえながら技法を発展させることで、作品は本質を損なうことなく現代と接続できます。そして、その積み重ねが一つの系譜となり、過去を敬い、現在に息づき、未来の受け手にとっても意味を持ち続けるのだと思います。

- 伊賀くみひもを新たな領域へと切り拓いている松田智行氏とのコラボレーションで、最も好奇心をかき立てられたのはどんな点でしたか?
私の好奇心を最も掻き立てたのは、どんな形にもなり得る伊賀くみひもを、松田さんが深い知識と洞察をもって捉え直し、再構築していく力です。新しい素材や技法に出会うと、私の思考はすぐに広がります。形の断片を抽出しそれを反復させた姿を想像し、伝統的な使われ方を踏まえたうえで新しい用途やスケール、文脈へと展開していきます。そして可能性を出し切るところまで考え抜きます。
さらに強く惹かれたのは、松田さんが世代を超えて受け継がれてきた工芸の知を土台にしながら、手仕事の伝統が周縁化されつつある現代日本の状況の中で、自身のビジョンを注ぎ込み、「保存」にとどまらない「進化」を担っている点です。デザイナー兼アーティストとして、その責任に私は強く共感しています。この系譜の一部となり、自分の技術と視点でその先を押し広げていくこと——それが今回のコラボレーションに私を引き寄せた理由です。

- 色や質感、織り方といった要素に触れる中で、思いがけない発見や驚きはありましたか?
衣服はこれまで長く制作してきたため、幅広いテキスタイルや糸には馴染みがあります。今回驚かされたのは組紐の素材そのものというより、応用の幅の広さ、耐久性、そして構造としての強さでした。絹は繊細に見えますが、スケールに対して驚くほど強靭で、歴史的に「柔らかな甲冑」として機能してきたという背景は、武士の防具に用いられてきた理由にもつながります。特定の組み方(織り方)では、想像以上の強度を発揮することにも驚きました。
さらに印象的だったのは光への繊細さで、光にさらされることで時間とともに色調のグラデーションが少しずつ移ろっていく点でした。複数の機械工程で引っ張ったり伸ばしたりされた後でも、内部の張力が保たれていたことにも驚きました。この「強さ」と「しなやかさ」、そして「静かな変化」が同居しているバランスが、予想以上に魅力的でした。

- 今回のコラボレーションの経験をふまえて、伊賀くみひもには現代のアートやデザインの中で、どのような新しい可能性があると感じていますか?
伊賀くみひもには無限の可能性があると感じています。糸の選び方や構造次第で、柔らかくも粗くも、伸縮性のあるものにも硬さのあるものにもでき、反射性・断熱性・吸湿性といった性質も持たせられます。編み込む構造の素材として、単体で成立させることもできれば、他の構造と組み合わせて複雑なシステムをつくることもでき、重量や形、スケールに縛られにくい点も大きな特徴です。
そうした性質が、他にはない自由度を与えてくれます。伊賀くみひもは、卓越した表現力を秘めた「基礎となる素材」だと思います。建築から彫刻、機能的なプロダクトから実験的なデザインまで、その高い適応力は、探究を続けたくなる余地を常に残してくれます。私にとってこれは一度きりで終わるものではなく、何度も向き合い、そのたびに新しい可能性を見つけていける工芸です。
[Questions by Maria Cristina Didero]