Interview with Designer デイヴィッド・ケオン

Interview with Designer デイヴィッド・ケオン

2026/05/31

(Interview)

  1. 長い歴史と豊かな表現力を持つ美濃焼ですが、不動窯を初めて訪れたとき、最初に心を惹かれたものは何でしたか?

美濃焼は何百年にもわたって受け継がれてきた工芸であり、製造技術を磨き続けることで、今日までその価値と存在感を保ってきたものだと感じました。私が惹かれたのは、歴史や制作プロセスそのものだけでなく、それを支えるサプライヤーや機械設備を含む産業のエコシステムです。実際に各所を巡り、さまざまな関係者の方々にお会いする中で、窯やろくろ、土練機(押出機)など、多くの機械が数十年前のものにもかかわらず、今も現役で使われ続けていることに気づきました。工房側も、それを更新したところで工芸として本質的な違いが生まれないのであれば、無理に変える必要はないと考えているようでした。私はそこにどこか詩的なものを感じ、その姿勢は作品に宿る素朴で力強い美しさにも、確かに表れていると思います。

  1. あなたのデザインは、精密さとエレガンスの絶妙なバランスが特徴です。不動窯のものづくりと向き合ったとき、そのバランスはどのように表現されましたか?

美濃焼は、焼成を経ることで一つひとつが固有の表情を持つところに、この工芸ならではの美しさがあります。他の製造プロセスと比べた時に、デザイナーとして最終的な見え方を同レベルでのコントロールが効きません。形状や耐久性、実現可能性については何度も議論を重ねてきましたが、それでも常に未知の要素や課題が残ります。今回のデザインは、モジュール状の陶製パーツを組み合わせることで、より大きな作品として成立させるという発想に基づいています。そのため、各パーツの設計精度が非常に重要になりました。完成形の明確なビジョンを保ちながら、個々の要素を丁寧に、そして正確に詰めていくことで、組み上げたときに均質な一体感が生まれます。その両者のバランスの中に、今回の「精密さ」と「エレガンス」があると感じています。また、釉薬が生み出す一つひとつの偶然性――つまり、同じものが二つとない仕上がりの中にこそ、エレガンスが宿るとも感じています。個々の結果を見つめること自体も興味深いですし、それらが集まったときに全体として立ち上がる表情にも魅力があります。技術的に言えば、最終的な見た目は職人の手に委ねられています。私が伊藤さんと対話しながら調整できるのは、色味や釉薬の流れの方向性までで、最終的な印象を決めるのは、伊藤さんの確かな技術に加え、焼成時の熱と釉薬がもたらす結果です。そのコントロールを手放し、未知を受け入れること――それがこの作品において欠かせない要素だと考えています。

  1. 制作のプロセスの中で、素材や技法に驚かされ、思いがけない方向へとプロジェクトが展開した瞬間はありましたか?

粘土がどのように変化し、乾燥や焼成の過程でどの程度収縮するのかを理解していくにつれて、形状を調整したり、追加の要素を検討したりする必要が出てきました。工程の細部が見えてくるほど、最終的なデザインも当初の想定から大きく変化していきました。初期の段階では、不動窯にとって最適なものづくりの観点からすると無理のある形状を求めてしまっていたのですが、そのことに気づいたとき、私は一度立ち止まり、このプロジェクトにとって本当に重要なのは何かを改めて見直す必要があると感じました。そこで意識は、妥協することではなく、「伝統的な工芸を新しいアイデアへと適応させること」へと移っていきました。それこそが、まさにCraft x Techの目的だと感じています。これまでの経験では、特定の結果を得るために製造元へ特定のやり方を強く求めてしまうこともありました。しかし今回は、不動窯の技術と美濃焼の魅力、そして私自身の作品に対する考え方の双方をきちんと活かした、納得感のある着地を見つけることの方が重要だと思えました。職人と直接向き合いながら、何をどのように変えるべきかをその場で理解し、調整していけることは、とても貴重だと感じています。

  1. 美濃焼は、多様性と実験性を受け入れる懐の深い伝統的工芸品です。そうした背景の中で、どのようにしてご自身ならではの表現を見出しましたか?

自分の作品らしさを反映したデザイン言語に焦点を当てることが、私にとっては重要でした。美濃焼と聞いて一般的に連想されるものとは異なる作品をつくり、通常のスケール感とは異なるものに挑戦したいと考えていました。私にとってCraft x Techは、デザイナーの視点と、伝統工芸が持つ手法や固有の美しさをバランスさせながら、新しい発想を探していくプロジェクトです。その中で私は、テクニカルでモダンなものを目指しつつも、美濃焼が持つ予測不能で、ときに偶然性をはらんだ美しさをきちんと讃えたいと思いました。同時に、スケールへの挑戦にも関心がありました。美濃焼の器は伝統的に比較的小さなものが多いため、より大きな作品へと展開する方法として、モジュール化や組み上げ(アセンブリ)の考え方を探り始めました。最終的なデザインは、美濃焼のプロセスを理解し、その枠組みの中で制作することを受け入れたところから生まれています。工芸の美しさを中心に据えながら、それと拮抗する要素を加えることで、より大きく、よりテクニカルな作品を成立させることができました。

  1. この伝統的工芸と密接に関わった経験を通じて、陶芸に対する見方や、デザインにおける手仕事の役割について、何か考え方の変化はありましたか?

陶芸にはこれまでも関わってきましたが、多くの場合はより工業的なスケールでの取り組みでした。今回のプロジェクトは、私にとってまだ完結しておらず、作品が仕上がっていく中で、素材との向き合い方についてもさらに学びが深まっていくと思っています。とはいえ、デザインにおける手仕事の役割についての考え方が根本的に変わるかというと、そうではありません。私はもともと、手仕事はものづくりにおいて欠かせない要素であり、積極的に評価され、守られるべきものだと考えています。家具や衣服、プロダクト、アクセサリーなど、ジャンルを問わず「良いもの」の多くは、部分的にせよ、あるいは全面的にせよ、手作業によってつくられています。そして今回コラボレーションしている職人の方々のように、優れた技術を持つ作り手の手が入ることで、単に美しさや洗練が加わるだけでなく、経験や審美眼、そして完成度の高さがプロダクトに宿ります。さらに製造の世界で自動化が進むほど、手仕事によるものには希少性や価値、ある種のステータスが一層感じられるようになっていくと思います。

Fushi by デイヴィッド・ケオン (@caondesignoffice.com)

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